昨年スタートした、GKB48事務局によるオープンキャンパスレポート。2025年度第1回は、千葉県の私立中規模大学(収容定員5,907名)、千葉商科大学を訪問しました。
同大学は2025年に全学改組により、社会経済・環境の変化へ柔軟に対応し、「実学教育」をより未来志向に再構築。新体制で迎えたオープンキャンパスでは、学生も教職員も、それぞれの立場から大学の魅力を“自分の言葉”で伝え、まるでキャンパス全体がプレゼン会場のような一体感を生み出していました。そんな千葉商科大学の“伝える力”に迫ります。(取材日:2025年5月25日(日)取材・文:栗原直以)
第一印象で伝わるホスピタリティ
「楽しいOCになるかと思います」。見学の許可をいただいた際、大学本部長の出水淳さんから添えられたこの一言に、自然と期待が膨らみました。2025年5月25日、千葉商科大学のオープンキャンパスに足を運びました。
最寄駅のひとつJR市川駅前のバス停付近には学生スタッフが看板を持ち、誘導を行っていました(市川駅にはいくつかバス乗り場があるので安心しました)。乗車10分後、大学近くのバス停に到着すると、キャンパスへの道の曲がり角、門、建物と、スタッフが自然な笑顔で声をかけてくれます。多くの来場者数にもかかわらず、参加者が迷わないようにスタッフがスタンバイし、どこでも気持ちのよい挨拶が飛び交っていました。“ホスピタリティ”という言葉がしっくりくる、来場者への配慮が自然となされつつも、学生スタッフの活気があふれる、新緑に覆われたキャンパス。プログラムが始まる前に、既に大学の“顔”が見えてきた気がしました。

考え抜かれた「大学概要説明会」
最初の全体プログラムとして実施されたのが、「大学概要説明」でした。会場はメインの702教室(約500人収容)を中心に、他2教室へ中継する形で構成されており、約1,000名の申込に対応との説明がありました。そのほか11時からはオンラインでの参加可とのこと、都合がつかない方、遠隔地の方への配慮も抜かりはありません。この時点で、大学側の丁寧な設計と運営力を感じました。
本編に先立ち、入試広報課の職員の方による事前説明が10分ほど行われました。当日の流れや配布資料の使い方などを、スライドを用いて分かりやすく説明。驚いたのは配布された「OCプログラムパンフレット(A4・全8ページ)」が、政策情報学科・吉羽ゼミナールの学生たちによって制作されたものだと紹介されたことです。デザインはシンプルで見やすく、色分けやページ構成も工夫されています。ゼミのテーマが「デザイン思考を用いたモノづくりの実践」とのことで、なるほどと納得しました。こうした“さりげない学びの可視化”も、大学らしさの一つと感じました。

そして本編の「大学概要説明」では、入学センターの職員が登壇し、「入学案内」をスクリーンに投影しながら、15分間で大学の教育方針や学びの特徴について、丁寧に語りました。「ひとり、ひとりに、生きてく力を。」というタグラインに込めた想いから始まり、実学教育の位置づけ、共通教育と専門教育のバランスなどが、具体的な事例を交えてわかりやすく説明されました。
高校生にとっても、保護者にとっても、“何を伝えたいか”がすっきりと伝わる内容でした。この短い説明の中で、「この大学で何が学べるのか」「なぜそれが必要なのか」、そして「どうやって学ぶのか」がしっかりと浮かび上がっていたように思います。
なお、印象的だったのは、概要説明で「入学案内」が説明ツールとしてしっかり活用されたことです。「入学案内」は個別相談時の説明ツールとして利用する場面はよく見かけますが、スクリーンに大きく投影して説明するのはあまり見かけません。説明者も新規に資料作る必要もなく、参加者も後で見返すこともできるので、理にかなっている方法だと得心しました。
続いて行われたのは、学部紹介プレゼン。登壇したのは各学部の教員で、それぞれ5分ずつ、合計4学部分の紹介が続きました。短時間ながら、それぞれの学びの特色が明確に伝わる構成で、話し慣れた印象のプレゼンが続きます。「商科大学」の名にふさわしく、情報整理やプレゼン技術にも“伝える力”を感じました。また説明会の終了後、次のプログラムごとに学生スタッフが、大人数の参加者を整然と誘導していくのには感嘆されられました。
手際がよく気配りの利いた学生キャンパスツアー
その後、参加したキャンパスツアーでは、学生スタッフの手際のよい案内が印象に残りました。10名程度の少人数グループで、終始バックウォークで参加者に顔を見せながら語り掛けつつ、ポイントとなる施設の前では立ち止まって説明を行い、時間の関係で施設内には入らないものの、資料の写真を見せながら工夫して紹介してくれました。途中で進行方向を変えて列の順番を入れ替えるなど、後ろの人も話が聞きやすくなるよう配慮されていたのも、細やかな工夫のひとつです。

高校生に直接プレゼンする学生プロジェクトブース
ツアー参加後、ひときわ黄色の幟(のぼり)が目立つ、サービス創造学部の説明会にも参加しました。会場には教員のほか、3・4年生の学生が4名登壇し、自身が関わったプロジェクトについてプレゼンしてくれましたが、その発表がとても堂々としていて、自然と引き込まれました。人前での発表に慣れている様子からも、普段からそうした機会が豊富にあることがうかがえます。
教室を出た先のホールでは、各学部の取り組みを紹介するパネル展示と相談コーナーが並び、教職員や学生が来場者に気軽に声をかけている様子が、どこか学園祭のようなにぎわいを感じさせました。

多くの大学がオープンキャンパスで「大学を伝えること」に力を入れていますが、千葉商科大学の印象的な点は、その空気が“やらされている感”ではなく、自然に“楽しんで伝えている”ことにあります。教職員は皆、それぞれの持ち場で来場者が楽しめるよう、興味・関心を持つよう考え抜き、プログラムや空間の設計、説明の表現にも工夫が見られました。特に3年生・4年生のこなれたプレゼンからは、プロジェクトを通じて鍛えられていることが想像できましたし、教員の話しぶりからは「この先生の授業は面白そう」と感じさせられます。
“全員が自分の言葉で大学を語る”ことが、結果として大学の魅力を立体的に浮かび上がらせている──。千葉商科大学のオープンキャンパスには、そんな説得力がありました。
「伝える力」と「育てる力」が息づくオープンキャンパス
今回、千葉商科大学のオープンキャンパスを通じて強く感じたのは、「伝える力」と「育てる力」が現場に根づいているということです。学生も教職員も、“やらされている”のではなく、“伝えたい”という思いをもって、それぞれの場で堂々と大学の魅力を語っていました。中でも、プレゼン力の高さは印象的で、そのための準備(教育や指導)が、そのまま参加する高校生や保護者の「この大学なら成長できそう」「社会で活躍できる力がつきそう」という感覚に直結するように思います。
全員で丁寧に設計・準備し、しっかり伝える。その地道な積み重ねが、大学の実力としてにじみ出ている。全学改組で新しくなった千葉商科大学のオープンキャンパスには、そんなエネルギーがあふれていました。