近年、小規模女子大学の存在意義は、たびたび話題になります。かつてとは異なり、学校教育の現場では男女が平等に学べる環境が整い、大学進学においても共学志向の高校生が増えてきました。一方で、日本社会全体を見渡せば、女性の活躍が十分に実現されているとは言いがたい現実もあります。
 女子大学は、いまどのような学びを通して社会と向き合おうとしているのでしょうか。
 清泉女子大学が2027年4月に開設を予定している「公共創造学環」は、そうした問いに対する一つの答えとして構想された教育課程です。昨年行われた記者発表では、新しい教育カリキュラムにとどまらず、女子大学として何を引き受け、どのような学び方を選び取ろうとしているのかが語られました。(取材日:2025年12月19日/取材・文:GKB48事務局 栗原直以)

 

女子大学として、何を引き受けるのか

 女子大学を取り巻く学生募集の環境は、年々厳しさを増しています。少子化に加え、女性の進路志望が変化し、多様化する中で、共学大学に比べて学部の幅が狭い女子大学が志望先として選ばれにくくなっているとの指摘もあります。
 だからこそ、収容定員1320人と小規模な清泉女子大学が重視し、強みにしてきたのは、教職員が学生一人ひとりと丁寧に向き合い、その個性や関心に応じた学びを提供し、社会へと送り出すことでした。
 清泉女子大学には、創設以来育まれてきた人文知の蓄積があります。加えて、2001年に設置された地球市民学科以来、社会や世界との関わりを重視した実践的な学びも積み重ねてきました。山本達也学長自身も、公共政策論や民主主義論、情報社会論を専門とし、地球市民学科の教員として教育に携わってきた一人です。今回の構想は、そうした蓄積を踏まえたうえで、あらためて「学環」という新しい枠組みを加えようとする試みだと受け止めることができます。

清泉女子大学本館(旧島津家本邸)の会議室で行われた記者発表。新学環の説明は学長、山本達也教授により行われました

「学外で学ぶ」を、前提にするために

 これまでも清泉女子大学では、学外に出て学ぶ機会が用意されてきました。今回の公共創造学環で特徴的なのは、そうした実践を「特別な経験」にとどめるのではなく、学外で学ぶことそのものを前提とするよう、カリキュラムの構造自体を組み替えようとしている点にあります。
 具体的には、品川区をはじめとした地元の自治体や団体、企業と連携し、1年次からまちでのフィールドワークを必修とするほか、3・4年次には週3時間以上、学外でゼミ活動を行うことが想定されています。こうした取り組みを推進するための拠点として、「社会共創センター」が2026年4月から稼働する予定だといいます。

なぜ今、「公共」を学ぶのか

 人口減少や社会の成熟化が進むなかで、近年あらためて問われているのが、「公共」を誰が、どのように担うのかという問題です。行政や専門家に委ねるだけでは、地域や社会の課題に十分に応えきれなくなりつつある今、求められているのは、人びとが当事者として関わり合い、関係を結び直していく力だと言えるでしょう。
 公共創造学環が育てようとしているのは、そうした課題を「どこかの問題」として捉えるのではなく、自分自身の生活や関心と結びつけて考え、行動できる人材です。人文学や社会科学、都市や地域に関する知を横断的に学びながら、フィールドで他者と協働し、地域に息づく歴史や文化、人びとの営みを多面的に理解していく。そのプロセスを通じて、「公共」を制度や仕組みとしてではなく、ともに生きる場を支える関係性として捉え直すことが、この学環の学びの核心にあるように感じられました。

競争ではなく、「共創」という選択

 こうした学びを支えるうえで、公共創造学環が重視しているのが「共創」という考え方です。学外にひらく学びは、地域(品川区)の自治体や企業、団体との協働にとどまりません。記者発表後に大学側に伺った話では、他大学との連携についても積極的に検討したいという言葉が聞かれました。
 小規模な女子大学にとって、すべての分野やノウハウを自前で揃えることには限界があります。しかしその制約を、他者と補い合う関係へと転換することで、学びの可能性は広がります。優劣を競うのではなく、それぞれの強みを持ち寄り、共に学びをつくる。公共創造学環は、そうした「共創」を前提とした大学のあり方を示そうとしているように思われます。

地域に根ざし、「共に創る公共」へ

 公共創造学環の構想から浮かび上がってくるのは、何か新しい制度を打ち出そうとする姿勢というよりも、清泉女子大学がこれまで大切にしてきた価値を、いまの時代に引き受け直そうとする姿です。
 記者発表では山本学長が、大学の設立母体である聖心侍女修道会の創立者、聖ラファエラ・マリアの言葉「すべての人が幸せになるように働くこと、それが本当の愛」を紹介しながら、「学生自身が、ここで学んだことや経験をもとに、会社の内外や地域のなかで、誰かの幸せにつながる働き方をしていってほしい」と語りました。
 公共創造学環は、完成された答えを提示する場ではありません。しかし、女子大学として、ミッションスクールとして、課題山積の現代社会とどのように向き合い続けていくのか。その問いを教育のかたちとして差し出そうとするこの試みに、心からエールを送りたいと思います。

【参考】清泉女子大学 公共創造学環WEBサイト
https://www.seisen-u.ac.jp/public/