畿央大学は奈良県にある私立大学で、健康・教育の2学部5学科2研究科、在学生数2200名規模の大学です。実学のスペシャリストを育てる大学で、高い就職率が特色です。2021年4月に行われたGKB48オンラインセミナーでは、広報センター課長の伊藤誠さんに「1分ムービーを活用した広報」について語っていただきましたが、本インタビューでは大学の歴史や教育の特色を踏まえ、募集戦略を含めた広報についてお聞きしました。前編・後編と2回に分けて掲載します。(インタビュアー:GKB48事務局長 山下研一、インタビュー日:2021年9月6日)
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―― 4月のセミナーはご登壇ありがとうございました。20分と非常に短い時間でしたので、今日はじっくりお話をうかがえればと思います。貴学では特に資格取得や就職に力を入れていますね。

 おっしゃるとおり、本学は実学のスペシャリストを育てる大学で、高い就職率が特色です。健康科学部と教育学部がありますが、どの学科も将来の夢につながる、めざすべき資格が設けられており、学生の頑張りはもちろん、教職員が一丸となって支援する体制が社会から評価されています。このような状況は、創立当時の志の高い先生方や職員の先見の明と、その後に続く教職員の努力の賜物だと思っています。

図1 畿央大学の学部学科構成

――― 先見の明のある職員、気になります。

 大学は2003年に創立されましたが、母体となる冬木学園は、もともと高等女学校で教鞭をとっていた故・冬木智子先生(初代畿央大学学長)の元に、伝説の教え子3名が「もっと勉強したい」と頼ってきたことからスタートしたといわれています。1964年には女子高校、1966年には女子短大が設立されました。
 短大は定員充足率が非常に低かったため、起死回生をかけて理学療法という新しい分野を軸に4年制大学を共学で創設しました。当時、受験生のニーズが高いにも関わらず関関同立にないニッチな分野として、「理学療法」という分野に目を付けたのでした。幸い、高等教育で理学療法の分野を教えたいという優秀な若い先生方にも恵まれ、募集倍率は30倍にもなり、大ヒットしました。当然、優秀な学生を集めることもできました。奈良県の女子短大の四大転換などうまくいくはずはないという、周囲の予想を見事裏切ったわけです。
 同時に栄養とデザイン分野の学科も作ったのですが、理学療法学科が評判になると、他の学科の受験倍率も一緒に上がっていきました。その後2006年には短大に残っていた教育学科も四大に移行したのですが、これも団塊の世代が大量に退職する時期を見据えて実施しました。その2年後、2008年には看護医療学科を開設させ、現在の学部構成になったわけです。

写真1 畿央大学 広報センター課長 伊藤誠さん

―― そんな経緯があったのですね。女子短大から四大に移行する例は多くありますが、全てがうまく行くと限りません。

 短大の良き遺産と新しい発想による分野の融合が重要です。現在の大学は共学ですが、これまでの歴史や取得できる資格の影響もあり、女子比率は約7割になっています。当然、関西の主要女子大が主な競合校となりますが、国公立大志望者の第一併願校として選ばれるよう、国家試験・採用試験の現役合格率や就職率を上げることに力を入れています。比較的在学生が少なく、アットホームな雰囲気もアピールポイントです。

図2 畿央大学における国家試験や採用試験の現役合格率

――― 貴学は奈良県にある大学ですが、関西においては、どういう位置づけでしょうか。他エリアからみると大阪からも非常に近いイメージではありますが。


 本学がある奈良県は、残念ながら関西の他府県から見ると実は目立たないエリアです。奈良県自体は「鹿がいるところ」「修学旅行で行くところ」というイメージで、通学を考えるとロケーション的にはデメリットの方が大きい印象です。逆に言うと、「奈良県にある大学にわざわざ来てもらう理由」が必要になります。そういう意味でも、本学では「資格・就職に強い」という特色とわかりやすい実績が出せるよう力を入れています。
 また最寄駅である近鉄大阪線「五位堂」駅には、大阪のターミナル駅「鶴橋」から快速急行で1駅(最短21分)です。実は半数以上の学生が大阪府出身でもあり、募集活動ではアクセスの良さをうたっています。奈良県はコロナ禍で一度も緊急事態宣言が出ていないこともあり、今年度のオープンキャンパスをすべて対面で実施できているのは、募集活動上、恵まれていると言えるかもしれません。

図3 畿央大学のロケーション

――― 募集上、コロナ禍は避けられない話題ですが、どのように対応されましたか。


 今年は対面で実施できているオープンキャンパスですが、昨年は対面での実施ができず、志願者数に影響が出ました。そのため今年は3、4、6、8月と事前予約制で人数を制限して実施。2年前の9割程度の参加者を確保しました。高校2年生の時に参加できず、コロナ前の2年前よりも初めて来学する3年生・受験生が多い印象です。
 来場のピークは8月中旬のオープンキャンパス。土日、午前午後で、各200組(計800組)の来場予約を受け付けました。炎天下にもかかわらず感染対策で学生スタッフも教職員もマスクとフェイスシールドを装着して、なんとかやり遂げました。ありがたいことに学生スタッフのほぼ全員が終了後のアンケートで「来場者と交流できて楽しかった」「初対面の学生とも仲良くなれた」「またオープンキャンパスをしたい」と回答してくれました。来場者の皆さんにも畿央大学ならではの雰囲気や魅力を伝えられたのではないか、と期待しています。

写真2 オープンキャンパスは学科・学年をこえて交流する貴重な場にもなっている

後編に続きます。後編は近日中に公開予定です。)