央大学は奈良県にある、健康・教育の学部において実学のスペシャリストを育てる私立大学で、高い就職率が特色です。後編では、引き続き広報センター課長の伊藤誠さんに、「数理・データサイエンス・AI教育」の取り組みや理学療法分野の研究をする「ニューロリハビリテーション研究センター」の発信等についてお伺いします。(インタビュアー:GKB48事務局長 山下研一、インタビュー日:2021年9月6日)

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――― 貴学の「情報処理演習」科目は2021年8月に、文部科学省より「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」(以下MDASH)の認定をされていますね。初年度の認定ですが、取り組みの背景などはありますか。

図1 畿央大学は、文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」に初年度認定された

 ありがとうございます。この認定には、2014年度からノートパソコンを4年間貸与するという当時としてはかなり先進的な取り組みをスタートしていたことが大きいと思います。これは冬木正彦学長の専門が教育システム情報で、ICTを活用した学習支援と情報教育の重要性をコロナ禍のはるか以前から認識していたことによります。学生が各自で様々な機種を持っているよりも、全員が同じ機種を持っている方が授業進行も学生同士の教え合いも進めやすく、高い教育効果が見込めます。その代わりにPC教室の撤去、wi-fiの整備、クラウド化を進める環境整備を行いました。結果として、2020年4月上旬から予定通り前期授業を開講することもでき、全学生へのPC貸与はコロナ禍でのオンライン移行にも大いに役立ちました。
 またMDASHの初年度認定は全国から国公立合わせて66大学で、うち関西の私立大学では本学を含め5大学のみの認定でした。関係する先生方のご尽力の賜物だと思います。

図2 2014年度よりノートPCを全学生に貸与

――― PCの全学生貸与も先見の明を持った取組ですね。医療や教育系の資格取得が中心の学部を持つ大学ですと、データサイエンス教育や情報教育の追加は、カリキュラム設計が難しいとの声も聞きます。

 本学でも専門科目が多く、時間割の制約上、幅広い知識を身に付けるような教養科目を多く受講するには負担が大きいことが課題でした。ところが、コロナ禍での遠隔授業の体験を通じて、時間割と空間の制約を外して学ぶという可能性が生まれてきました。
 検討の結果、2021年4月に「次世代教育センター」を立ち上げることになりました。ここでは、MDASHに認定された「情報処理演習Ⅰ・Ⅱ」を基盤とした次世代型情報教養プログラムを開講します。また、関心のある受講生にはキャリアセンターが主管する「MOS検定講座」などのエクステンション講座への橋渡しも積極的に行います。今後は次世代をテーマにした講座の企画なども予定しています。
 4年間の学生生活を送る中で入学時に希望していた進路を変更する学生もいますが、こうしたセンターのサポートで情報系のスキルや資格を身に付け、自信を付けてもらうことも想定しています。

図3 次世代教育センターの教養プログラム

――― 情報学やデータサイエンスのスキルは、今後、まさにどのような業界においても必要とされますね。さて、学園全体の広報について伺います。貴学のプレスリリース等の発信を拝見していると、理学療法関係で研究の発信を目にすることが多いように思います。

 理学療法分野については、教員主導で「ニューロリハビリテーション研究センター」の発信が盛んです。ニューロリハ分野で有名な森岡周センター長を筆頭に研究センターの先生方は、Webサイトや動画、SNSを通じて、現場のセラピストに役立つような研究や事例紹介を積極的に発信しています。理学療法学科に限らず、教員と職員の距離が近く気軽に相談しながら広報ができることも本学のかくれた強みだと考えています。
 理学療法学科は関西私大で初めて開設されましたが、実は大学院も関西初です。理学療法士やセラピストが卒業しても通える大学院として2007年にスタートし、開設当時からスカイプ等のWeb会議システムを使った遠隔授業を展開し、現在では266名の修士と35名の博士を送り出すまでになりました。臨床と研究を両立する卒業生も増えており、リカレント教育としても機能しています。まさに、生涯の師に出会える大学になっています。

図4 ニューロリハビリテーション研究センターのサイト https://www.kio.ac.jp/nrc/
図5 視聴回数38万回をこえる研究センター 公式YouTubeチャンネル

――― 医療や福祉の現場で活躍する卒業生が、大学院生として通ってくれるのは、大学として理想的な形ですね。貴学のSNSでは卒業生が訪問される話題をよく目にします。

 コロナ禍になる前までは、母校に帰ってくる卒業生と毎週のようにキャンパスで顔を合わせていました。以前キャリアセンターで就職指導を担当し、長く同窓会事務局も担当していたので、卒業生とはFacebook等を通じてつながっています。母校を身近に感じてもらおうと、畿央大学で今何が起こっているのかについても意識的に発信しています。YouTubeで公開している「1分でわかる畿央大学ムービー」で卒業生に登場してもらうときも、学外にロケには行かず、キャンパス内で撮影をしています。卒業生が気軽に母校に戻ってきてくれるからです。
 大学業界では珍しい「保護者インタビュー動画」「親子インタビュー動画」を撮影した際には、先生方や進路支援部のスタッフにお勧めの在学生・保護者を推薦してもらい、難なく公開にこぎつけることができました。小規模な大学なので広報の枠をこえて幅広い業務がありますが、いつも積極的に協力してくれる教職員に助けられています。この協力体制はおそらく全学的に、常に「学生の100%進路保証をめざす」という共通の目標があることが大きいのではないでしょうか。試験に合格しなければ学生の夢をかなえることもできませんし、結果的に本学の経営にも影響してきます。
 本学のキャッチコピーは“やさしさを「チカラ」に変える。”です。人の役に立ちたいという想いをもった学生を、本学の学びを通して人間性と専門性を兼ね備えた人材に育てて社会に送り出すことで、やさしい社会を実現することをめざしています。難局が続いて変化を強いられる状況ですが、この点についてはブレずに、教職員一丸となって在学生を応援していきたいと思います!

――― 本日はありがとうございました。